エピソード9  抱きしめられない娘 ロンちゃん  追記:2009年7月11日

2005年6月15日 ロンちゃん1歳
正直に言うと、この日をロンちゃんと一緒に迎えることができるなんて思っていなかった
ロンちゃんは昨年9月の末に水頭症による急激な脳圧の上昇により脳に障害が残ってしまった
多分、眼も見えてはいない。典型的な水頭症の症状である、過敏な反応、嗜眠、四肢の麻痺の症状がある。
できることは排泄と、グルグルと回ること、そしてペロペロと舐めること。耳は聞こえるようで、声をかければ反応する。大きな音にもビクッと起きる。
水頭症という病気、すぐに発病してもすぐに死に至ることはないらしい。でも、体力低下による衰弱死が多いという。
でも、ロンちゃんは今日まで生きてきた。衰弱どころか、毎日何度も食べる栄養たっぷりのご飯のおかげで、少し痩せてはいるが毛ヅヤもよく、快便快眠である。
その生命力がある限り、ロンちゃんは生きつづけるはず・・・

1年前の6月15日。4人娘の第4子で産まれてきたロンちゃん。私の目の前で産み落とされたこの子は、その体の大きさのわりに、どこか儚げで消えてしまいそうだった。ツルンと生まれたのに血色が悪く、しっかりこすっても「ミィ〜・・・・」と消えてしまいそうな声。なんとも言いようのない不安な気持ちでいっぱいになった。でも息はしているし、次第に血色がよくなってきたので大丈夫だと言い聞かせ、母犬に返す。
すでに3匹の赤ちゃんを抱えている母犬は4匹目の娘も大事に大事に抱えてくれた。
その姿をみていたらとても幸せな気分になり、さっきの不安な気持ちは忘れてしまった。
でもそれから30日後、その不安な気持ちはジワジワとよみがえってきた。
眼が開いて、みんながヨチヨチ歩き出しても、彼女だけはボゥ〜っとしている。離乳食を開始しても、いつまで経っても自分から食べようとはしない。頭蓋骨の開きもシャレにならないほど大きい。
あ〜そっか〜この子は水頭症なんだ・・・なぜか素直に受け入れることができた。
ゆっくり育てていこう・・・・そう思った。
40日を過ぎた頃、彼女は浅めのお皿からA/D缶を食べることができるようになった。A/D缶が大変気に入ったらしい。やっと、食べられる物が見つかり、ヨチヨチ歩きながらも元気に姉妹とじゃれてみたり、尻尾を振って寄ってきたり・・・仔犬らしい本当にかわいい子に育っていた。このまま、何事もなく成長してくれれば・・・
ほかの姉妹たちが成長してくると、だんだん、じゃれ合い方もハイパーになってくる。時々、ロンちゃんの悲鳴も聞こえるようになってきた。そろそろ、みんなとは別にしなくてはダメだなぁ・・・でも、さびしいだろうなぁ
と躊躇していたのがいけなかった。
姉妹たちにもみくちゃにされたロンちゃん。妙な泣き声に駆けつけたときには、グルグルと旋回しながら倒れこむように歩くロンちゃんがいた。

それから1週間はロンちゃんの夜泣きが続く。でも、その7日の間にどんどん回復し脳圧が上がる前の状態まで戻ったのだ。
トコトコ走る、ペロペロ舐める、甘えてなく、嬉しそうにはしゃぐ・・・仔犬ならどの子でもしてくれる当たり前のしぐさがこんなにも可愛いものかと・・・ただただ可愛くてうれしくて涙ぐむ私。
それから2ヶ月は本当にしあわせだった。毎日、ロンちゃんのお顔を見ているのが楽しくてしかたがなかった。このまま、元気に育って欲しい、育ってくれる!そう信じていた。

9月の末、再び脳圧が上昇。
お顔についたウンチをとろうと、ロンちゃんをシャンプーしたばっかりに、彼女をパニック状態にしてしまったのだ。
前の時とは明らかに違う。完全にパニック症状でゴロゴロ転がりながらもがき苦しむロンちゃん。
眼は落ち窪み、血走り、大きな声で遠吠えを繰り返す
もう、どうしていいのか、ただただ、パニックが治まるのを待つことしかできない。
どうしたらいい?なんで?ごめんね、ごめんね・・・・
病院へ行き鎮静剤と脳圧を下げる注射をしてもらう。先生もあまり良い事は言わない。遠まわしに「安楽死」を進められた。
「安楽死」・・・私が考えなかったとでも?何度も考えた。もう、これ以上苦しませてはいけない。1週間、前のときのように1週間経っても回復の兆しが見えなかったら、眠らせてあげよう。永遠に・・・
そう、考えるだけで涙がボロボロこぼれ落ちた。泣かない日は無かった。

1週間後、ロンちゃんの目が、あんなに落ち窪んでいた眼が、少し元に戻ってきた!
脳圧が上がったせいでパンパンに張っていた頭も、小さくなっている。
パニック症状も徐々に和らぎ、感覚が狭まってきた。
雲間に射した一筋の光とはこんなことを言うのだろう。本当に希望の光だった。

それから今日まで、1日、3日、1週間、半月、1ヶ月・・・毎日毎日、つねにロンちゃんを見ている。
元気だった頃にはもう、戻らない。笑う、泣く、甘える、走る、跳ぶ、抱っこもチュウもできない。
ご飯を食べるときは、唯一できるペロペロで、私の指から食べる。相変わらず、A/D缶は好き。
むやみに触ることはできない、抱っこだって無理。急激な動きは怖いのだ。
大きくお口を開けて「いやぁ〜っ!」というお顔をする。この顔は怖い・・・幸い、一瞬で終わるパニック
やっと、落ち着いてきたんだ・・・
ロンちゃん、もう少しママと一緒にいてくれる?
ママに償いをさせてちょうだい。あなたをこんなふうにしてしまったママをどうか許して・・・大好きだよロンちゃん
時々、ぎゅっと抱きしめたくなる。でも我慢・・・
ロンちゃんをこの手に抱くことがあるとしたら、それはお別れの時。
それまで、いつもと変わらないゆっくりとした時間を過ごそう
ロンちゃん 1歳のお誕生日、おめでとう

2005.6.15

ロンちゃん日記・・・ままさんの気ままな日記より抜粋


2009年7月9日 
ロンちゃんは精一杯生きて、5年の生涯を終えました

苦しかったよね、もっと早く楽になりたかったよね
ごめんね、ごめんなさい

今でもあなたが大好きです
一生、あなたの可愛い笑顔を忘れません
命の強さ、教えてくれてありがとう
ママの娘でいてくれてありがとう
ありがとう ありがとう ありがとう

2009年7月11日 追記